逮捕から裁判までの刑事事件の流れと、それぞれの状態に対しての弁護士の役割についてご案内します。
まず、刑事事件の流れ図を確認ください。
図中の各項目をクリックすると、説明文へジャンプします。
刑事事件の流れは、上記の図のように進んで行きます。それでは、図の①から順番に解説をします。
例えば、他人に暴力を振るってしまった、他人や店舗から物やお金を盗んでしまった、痴漢をしてしまった、わいせつ行為をしてしまった。
このような事の被害に遭われた被害者側であれば、警察に被害届を提出するか否かを判断されると思います。
もし、加害者側であった場合、警察に捜査されるのではないか?逮捕されて留置場に入れられてしまうのではないか?などどうすれば良いのかわからない方も居られると思います。
一般的に刑事事件において捜査機関が捜査を始めるきっかけは、警察による職務質問から事件が発覚する場合や被害者からの被害届提出、受理から捜査が開始される事が多いようです。
捜査機関は、職務質問や被害届の提出を受け発覚した刑事事件の捜査を開始し、被害者の取調べをしたり、犯行現場の状況を調査したり、犯行現場に残されていた遺留品の捜査をしたり、DNA鑑定を行ったり、現場付近の防犯カメラを解析したり、目撃者や周辺の住民に聞き込み調査をしたり、時には裁判所に令状を発付してもらい個人宅への捜索などを行い、事件に絡んでいるであろう証拠品などを押収しながら被疑者(容疑者)を特定していきます。
刑事事件が発覚しその後、様々な捜査によって被疑者(容疑者)を特定します。被疑者(容疑者)が特定されると捜査機関は、裁判所に逮捕状を発付してもらい被疑者(容疑者)を逮捕します。逮捕には種類があり「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3種類になります。逮捕状が発付されてから逮捕されるのは、「通常逮捕」になります。
逮捕されるとほとんどの場合、被疑者(容疑者)は家に帰る事が許されておらず最長48時間は留置場に収容され取調べを受ける事になります。警察は、この48時間以内に被疑者(容疑者)の身柄や事件の関係書類、証拠などを検察庁に送らなければなりません。
刑事事件を思い浮かべると逮捕され留置場や拘置所で勾留され捜査や取調べを受けるイメージがありますが、在宅事件では、刑事事件でも逮捕されず日常とほぼ変わらない生活を送りながら捜査機関や検察の捜査が進んで行くというものです。
日常生活と変わらないと言っても警察や検察から取り調べの為、呼び出される事があります。
また勾留されていれば(身柄事件)最長勾留期限(20日間)が決まっているのでそれまでに起訴されるか不起訴になるか決まりますが、在宅事件の場合、法律的に期限が決まっていないので起訴するか不起訴にするかの判断が捜査が始まってから数カ月にわたり長期化し、どうなってしまうのか不安な日々を過ごさなければならないといったこともあります。
逮捕され48時間以内に警察は、被疑者(容疑者)の身柄や事件の関係書類、証拠などを検察庁に送致(送検)します。
刑事事件の中には、逮捕されるまでもないような事件や逮捕されても48時間以内に釈放され勾留されるまでもない事件も沢山あります。
その様な場合、被疑者(容疑者)は身柄を拘束されず在宅のまま、警察は関係書類のみを検察庁に送致(送検)します。
警察からの被疑者送致(送検)を受けて検察では、送致(送検)を受けてから24時間以内に被疑者(容疑者)の取調べを行い、さらなる捜査や取調べが必要な場合や逃亡のおそれがある場合、罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがある場合には裁判所に勾留請求をします。
警察からの被疑者送致(送検)を受けて検察では、送致(送検)を受けてから24時間以内に被疑者(容疑者)の取調べを行い、勾留の必要が無ければ釈放しなければなりません。
検察が裁判所に勾留請求をした場合、裁判所は被疑者に対して勾留質問を行い勾留の必要の有無を判断します。
裁判所が勾留の必要なしと判断すれば勾留されず直ちに釈放されることになります。
勾留とは、被疑者(容疑者)に逃亡のおそれがある場合、罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがある場合など拘置所や警察署にある留置場(留置施設)に身柄を拘束し捜査や取調べを行う事です。
10日間の勾留では捜査や取調べが終わらないなどやむを得ない事情で検察は裁判所に最長10日間の勾留延長請求をする事が出来ます。
裁判所が勾留延長の必要なしと判断すれば勾留されず直ちに釈放されることになります。
検察からの勾留延長請求を受け、裁判所の判断でさらに勾留が必要と判断されれば最長10日間の勾留が延長されます。
不起訴とは、検察官が起訴しないと決定した処分です。不起訴になれば刑事裁判自体行われないので有罪判決を受ける事も絶対にありえません。ですから前科がつくことはありません。不起訴の理由には主に「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3種類が存在します。
公判請求(起訴)とは、裁判によって被疑者(容疑者)が犯したであろう犯罪事実について審理を求めるものです。起訴することが出来る権限は、原則として検察官だけが有しています。検察官だけが被疑者(容疑者)を起訴できる権限を起訴独占主義と言います。捜査機関や検察に捜査を受けていた被疑者(容疑者)は、検察官に起訴されると被告人となり、刑事裁判を受けなければならない立場になります。
略式命令請求の場合、通常の裁判(公判)の手順を踏まず検察は略式手続の請求(起訴)と同時に証拠一式を裁判所に送り、裁判所は手続きを受ければ直ちに起訴状と証拠を評価します。略式手続が行われる条件は、100万円以下の罰金または科料を課すまでの罪状となります。
即決裁判手続きとは、重大事件以外で被告人と弁護士が同意し、被告人が有罪であることを認める事で争いのない簡易かつ早く審理される制度です。即決裁判は、起訴された後、2週間以内に公判が開かれその日の内に判決を言い渡されることになり、判決には必ず執行猶予が付きます。
起訴されると裁判によって判決が確定するまで拘置所や留置場で勾留されますが保釈という制度がありこれは、保釈金の納付や住居の制限などの条件をつけられることにより勾留の効力を残しながら勾留の執行を停止し、被告人の身柄を解くものです。
保釈が認められると勾留されている拘置所や留置場から釈放されることになります。その際には保釈の条件が付けられ必ず守らなければなりません。保釈の条件には、「保釈金の納付」(保釈金は罪状や被告人の資力で異なります)「裁判所からの出頭命令には必ず従う事」「被害者や共犯関係者などと接触してはならない事」「3日以上の旅行をする時には事前に栽位番所の許可を得る事」「住居地を変更する場合には裁判所の許可を得る事」などがあります。
保釈請求を行っても必ず保釈が認められる訳ではありません。裁判所によって保釈が却下されれば拘置所や留置場での勾留が続いてしまいます。
刑事事件で起訴された被告人は、刑事裁判(公判)を受けなければなりません。刑事裁判(公判)は、被告人の有罪・無罪、有罪であった場合の刑罰の重さを証拠によって審理します。刑事裁判(公判)には、「通常の刑事裁判」と「裁判員裁判」の2種類があり、罪状などによってどちらかが選ばれます。
即決裁判手続きとは、重大事件以外で被告人と弁護士が同意し、被告人が有罪であることを認める事で争いのない簡易かつ早く審理される制度です。即決裁判は、起訴された後、2週間以内に公判が開かれその日の内に判決を言い渡されることになり、判決には必ず執行猶予が付きます。
略式裁判は簡易裁判所で行われ、非公開、書類審査のみで処分が決定します。非公開の為、何人たりとも傍聴することは出来ません。
公判手続での結論は判決によって終結されますが、略式手続では、略式命令によって結論が出されます。略式命令で下されるのは、罰金・科料のみとなっています。略式命令は、検察が略式手続を裁判所に求めてから約2週間以内に下されます。
裁判(公判)によって全ての審理が終了すると裁判官によって判決文が読み上げられます。判決文は主文と判決理由に分かれています。主文とは「被告人○○を○○の刑に処する」というような刑罰の言い渡しです。判決理由は、主文に至った理由を説明したもであり有罪判決なら有罪と判断するに至った事実関係やそれに対する法律の適用、量刑を科す理由が述べられます。