日本の刑事裁判は99.9%有罪になるとテレビや新聞などのメディアはもちろん、インターネット上でもよくつかわれています。
では本当に99.9%なのか裁判所が出している正式データをもとに計算してみましょう。
今回は例として平成27年のデータで検証します。
裁判の一審は、地方裁判所と簡易裁判所で扱ったものなので、両方抽出してみましょう。
※ただし、簡易裁判所で取り扱う「略式裁判(罰金刑)」は除きます。
公式pdfデータによると、
地方裁判所 | 簡易裁判所 | 計 | |
事件総数 | 74,111 | 8,756 | 82,867 |
有罪 | 53,120 | 6,842 | 59,962 |
無罪 | 70 | 13 | 83 |
免訴 | 1 | – | 1 |
公訴棄却 | 134 | 31 | 165 |
管轄違い | 3 | – | 3 |
その他 | 968 | 277 | 1,245 |
同一被告に関する事件の併合 | 19,815 | 1,597 | 21,412 |
とありますが、単純に「有罪」÷「事件総数」で有罪率は出ません。
それぞれの意味は、
事件総数 | 扱った事件の総数 |
有罪 | 有罪判決の数 |
無罪 | 無罪判決の数 |
免訴 | 有罪・無罪の判決を行わずに裁判を打ち切る |
公訴棄却 | 刑事告訴の打ち切り |
管轄違い | 管轄違いにより裁判が出来ない |
その他 | ※調査中です。 ★ご存じの方教えてください。 |
同一被告に関する事件の併合 | 同じ被告に複数の事件のある数 |
裁判を行った数は[事件総数]ー[同一被告に関する事件の併合]となるようですね。
では改めて、有罪率を出すと、、、
[有罪]÷([事件総数]ー[同一被告に関する事件の併合])
= 59,962 ÷( 82,867 ー 21,412 )
=97.56% あれれ?99.9%じゃない・・・
なぜ97.56%となってしまったかは、「免訴」「公訴棄却」「管轄違い」「その他」があるからです。これは被告人が裁判の途中で死亡してしまったり、同じ事件で2重の起訴であったり、時効が成立していたりする場合です。
では、裁判が完全に「有罪」か、「無罪」の判決が出た数から計算してみましょう。
[有罪]÷([有罪]+[無罪])=有罪率
= 59,962 ÷( 59,962 + 83 )
=99.86% 四捨五入すると、99.9%になりました。
裁判を行ったら99.9%有罪になるは少し違うようですね。
「免訴」「公訴棄却」「管轄違い」「その他」 もあるので、正確には 97.56% ですね。
逆に、無罪率を計算してみますと、
[無罪]÷([事件総数]ー[同一被告に関する事件の併合]) = 無罪率
= 83 ÷( 82,867 ー 21,412 )
= 0.14% となります。
このことより、単純に100%から0.14%を引いた数、
100ー0.14 = 99.86 ≒ 99.9%
この数値を有罪率だと勘違いされているのかもしれません。
また、他の年度を計算してもこの97.5%という有罪率はほとんど変わりません。誤差の範囲内です。
とはいえ、97.5%でもすごい数字であることは間違いありませんし、「刑事起訴されるとほぼ有罪」であることには変わりありませんね。
なぜこのような高い有罪率になるかは、裁判で勝てる事件しか起訴しないからです。証言や証拠が完全にそろっていて、最高裁まで争っても間違いなく勝てる事件しか起訴しません。
起訴できる証拠がそろっていないと、証拠不十分で不起訴となり釈放されてしまうのです。
では、逮捕され留置所に入れられた人たちはどれくらいの確率で有罪になるのでしょうか?
長くなってしまいそうなので、次回「逮捕された容疑者の起訴率」で詳しく説明・計算してみましょう。