保釈制度と保釈金

保釈制度 留置所

逮捕され捜査の結果、釈放されずに刑事起訴されてしまいますと、2カ月後くらいには刑事裁判が始まります。

起訴されるということは、警察や検察の取り調べはほぼ終了していることとなり、逮捕された「容疑者(被疑者)」は、「被告人」となり裁判の開始を待つ状態になります。

留置場にいる被告人は、そのまま起訴後勾留が続き、警察署の留置所から拘置所へ移送されます。

起訴後の勾留は、「逃亡の恐れ」や「証拠隠滅の恐れ」があるために留置所や拘置所で拘束され続けますが、保釈請求を行い保釈が認められますと、裁判が終わるまで一時的に釈放されます。

起訴されると保釈請求ができる

罪の種類や前科の有無、逃亡や証拠隠滅の可能性、容疑を認めているかどうかなどを考慮されたうえで判断され、身元引受人がいることや、被告人が逃亡しないような金額の保釈金を納めることで保釈が許可されます。

罪の種類で言えば、殺人事件や放火事件などと言ったいわゆる凶悪事件の場合では、保釈される可能性はとても低くなっており、重大事件であれば、保釈金の額は大きくなります。

保釈を認めるかどうかは、警察や検察ではなく、裁判所が判断しますので、裁判所が保釈を認めた後に検察が決定を不服として抗告 (異議申し立て) する場合があり、抗告が認められると保釈が取り消されたりもします。

保釈の請求時に保釈金を被告人側から弁護士を通じて、「50万円納めますので保釈してください。」とお願いしても、裁判所から「100万円納めなさい」と提示される場合があります。

被告人が逃げたら没収するという金額なので、どうしても高額な保釈金を提示されてしまいます。

保釈金はかなり高額ですが、立替制度があります

金額が決まり、裁判所としてもあとはお金を納めれば保釈する段階になっても、留置所にいる被告人がすぐにお金を用意することは容易ではありません。

家族や友人などにお願いをして、弁護士経由で裁判所へ保釈金を納めなければいけません。

家族や友人も、保釈金が数百万円になると、すぐに用意することはとても難しいですね。

そこで、保証金を貸してくれる団体が存在します。

「日本保釈協会」による立替制度と、「全国弁護士協同組合連合会」による保釈保証書発行の制度です。

日本保釈協会の立替
利用できる人被告人本人以外の方
限度額500万円
立替手数料50万円まで一律11,000円(税込)
50万円増す毎に11,000円(税込)加算
立替期間2カ月
立替期間の延長2ヶ月ごとに延長可能
延長の場合、延長手数料として立替手数料と同額を納付
担保や保証人基本的に必要なし
保釈金が没収されたとき保釈が取り消され、保釈金が没収された場合、協会に対して直ちに立替金相当額を賠償すること。

(例)保釈から1審裁判が終わるまでの4か月間、保釈金が100万円の場合の手数料

最初の2カ月:22,000円

3か月目~4か月目:22,000円

手数料の合計(4か月間):44,000円

全国弁護士協同組合連合会の保釈保証書
利用できる人保証委託者(身元引受人など)が弁護士を通して申し込む
※被告人、担当弁護士は補償委託者になることはできない。
限度額300万円
手数料保証する金額の2%
自己負担金保証する金額の10%を預託すること。
(保証金が没取になることなく勾留が失効した場合には、自己負担金は返金されます。)
保証期間保証期間は審級毎とし、保証金が没収される恐れがなくなる時まで。
(1審なら1審の裁判が終わるまでです。)
担保など保証委託者の収入を示す資料として、最新の源泉徴収票、確定申告書控、課税証明書、年金額決定通知書、直近2か月分の給与明細、直近の年金支給を示す資料等。
資産に関する資料として、不動産登記簿謄本など
保釈が取り消されたとき保釈金額は、全国弁護士協同組合連合会が支払う。
保証委託者預託した10%の自己負担金が返ってこない。

(例)保釈から1審裁判が終わるまでの4か月間、保釈金が100万円の場合の手数料

  • 自己負担金として保釈金額の10%なので:10万円
  • 期間にかかわらず審級毎に保釈金額の2%が手数料なので:2万円
  • 保釈金が没収されず、裁判が終わった場合:2万円
  • 保釈金が没収された場合:12万円

どちらも一定の審査はありますが、「日本保釈協会」の立替制度の方が、審査は緩やかな印象です。

いずれにせよ、被告人本人が申し込むことが出来ないので、身元引受人となる家族や友人にお願いして申し込んでもらうことになります。

保釈後の生活と制限

保釈されても一定のルールの元生活しなければいけません。

<保釈の条件>

  • 住居の制限(決められた身元引受人などの住居で生活しなければいけない)
  • 海外旅行や3日以上の旅行をする場合は、裁判所に申し出、許可を得なければいけない。
  • 事件関係者と直接の接触又は、弁護士以外の者を介しての接触は禁止。
  • 逃亡や証拠隠滅と思われる行為は禁止。
  • 裁判所から召喚された場合は、指定された日時に必ず出頭しなければいけない。

しかし、生活のため仕事をすることは許可されていますし、買い物や日帰り旅行なども認められていますが、遠方へ行く場合は担当弁護士に連絡又は相談することをお勧めします。

万が一、保釈の条件を破ってしまうと、保釈が取り消され再び拘留されるだけではなく、保釈保証金は没収されてしまいます。

また、保釈が取り消されるようなことをしてしまうと、裁判でも「反省していない」などとみなされ、より重い処分となることが予想されます。

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