突然、大切な家族が逮捕されたとき、「家の鍵はどうする?」「財布や携帯電話を受け取れるの?」といった不安が押し寄せます。今回は、逮捕時に本人が持っていた貴重品を受け取る方法「宅下げ制度」について解説します。
逮捕後、家の鍵や財布を受け取ることはできる?
逮捕された本人が持っていた家の鍵や財布などは、警察が預かり措置として金庫や倉庫に保管されます(事件にかかわる場合は、証拠品として押収されます)。家族がこれを受け取るには、通常「宅下げ」という手続きを行います。ただし、すぐに受け取れるとは限りません。自宅が事件現場となっている場合や捜査が続いている場合は、鍵や現金の引き渡しが制限されることがあります。
「宅下げ制度」とは?家族が利用できる仕組み
宅下げ制度とは、逮捕時に本人が所持していた物を、家族や弁護士が警察署から受け取ることができる制度です。受け取れるものは現金、家の鍵、衣類などが一般的ですが、捜査の妨げになる恐れがある物品は除外されます。申請には身分証明や受領理由の説明が必要です。
家宅捜索や証拠隠滅の恐れがある場合の制限
自宅が事件現場になっている場合、鍵の宅下げは認められません。捜査が完了するまでは、証拠保全のため家族でも鍵を受け取ることができません。また、財布の中身が捜査対象の場合、現金やカードがすぐには返還されないこともあります。
携帯電話はなぜ簡単に返してもらえないのか
携帯電話は通話履歴やメッセージ、閲覧履歴など重要な証拠を含むため、捜査が終わるまで宅下げされないケースが多いです。特に通信記録は事件解明に直結するため、返却には時間がかかることを理解しておきましょう。
宅下げが認められるタイミングと条件
鍵や財布の宅下げは、事件の性質や捜査の進行状況によって時期が異なります。証拠隠滅の恐れがなくなり、警察が返却を認めた段階で受け取り可能となります。起訴後であっても、必要に応じて警察が保管を続ける場合があります。
弁護士を通じて宅下げを依頼する流れ
宅下げをスムーズに行うためには、弁護士を通じて警察と調整してもらうことが重要です。例えば、家賃の振込が必要で鍵を早く受け取りたい場合や、重要な連絡を取るため携帯の一部データが必要な場合は、弁護士が状況を説明し、宅下げを交渉してくれます。
家族が知っておきたい注意点と対応のコツ
家族が焦ってしまう気持ちは自然ですが、正しい手順や心構えを知っておくことで、トラブルやストレスを減らすことができます。
- 自分の判断で警察署へ何度も交渉するより、弁護士を通じて依頼した方がスムーズです。
(弁護士は法的な手続きや警察との調整に慣れているため、無用なトラブルや誤解を避けられます) - 捜査状況によっては、どうしても受け取れないこともあるため、焦らず対応しましょう。
(無理に求めすぎると逆効果になることも。警察や弁護士の説明をしっかり聞くことが大切です) - 家賃の支払いや生活に関わる緊急事態は、弁護士に具体的な事情を伝えてください。
(「いつまでに」「どんな理由で」必要か、できるだけ詳細に伝えましょう) - 宅下げの可否や手続きの流れは、事件内容や捜査状況によっては、異なる場合があります。
(不明点は遠慮なく弁護士や警察の担当者に確認しましょう。思い込みで動かず、必ず最新の案内をもらうのが安心です) - 宅下げや差し入れの際には、受け取った物や渡した物の内容・日時を簡単に記録しておきましょう。
(後でトラブルや誤解を防ぐために、写真やメモなどで残しておくのがおすすめです)
どんなに困っても、一人で抱え込まず、必ず弁護士や信頼できる第三者と連携して進めることが、最も安全で確実な方法です。
もし「こんな場合はどうしたら?」と迷うときは、さしいれやにも気軽にご相談ください。家族の不安が少しでも軽くなるよう、丁寧にサポートいたします。
宅下げが認められるケース
宅下げは、必ずしも「証拠に直結しない物品」や「日常生活のために必要な事情」がある場合に認められやすいです。ここでは、実際によくあるケースをご紹介します。
衣類の洗濯や交換のための宅下げ
勾留が長引くと、衣類の洗濯や交換が必要になります。家族が着替えを差し入れるだけでなく、着用済みの衣類を宅下げで持ち帰ることも認められる場合があります。
読み終えた書籍や雑誌の宅下げ
留置場内で差し入れた本や雑誌を読み終えた場合、新たな差し入れに備えて宅下げで外に出すことができます。
示談金や弁護士費用の受け渡し
本人が所持していた現金から、示談金の支払いや弁護士費用の支払いを弁護士に宅下げで託すケースもあります。この場合、弁護士が事情を説明し、必要性が認められると許可されることがあります。
ペットの世話や緊急な用事のため自宅の鍵を宅下げ
一人暮らしでペットを飼っている場合や、急な用事で家に入る必要があるとき、自宅の鍵を家族が宅下げで受け取れることがあります。特に、ペットの命に関わる場合は事情を伝えると認められる可能性が高くなります。
衣類や書籍の購入資金のため現金を宅下げ
本人が差し入れを希望している場合、必要な現金を弁護士に宅下げで渡し、弁護士に衣類や本を購入してもらうケースも見られます。
クレジットカード・キャッシュカードの返却
事件に関係ないと判断されたカード類が、生活費の支払いや必要な手続きのために宅下げで返却されることもあります。
壊れた眼鏡や医療器具などの宅下げ
勾留中に眼鏡が壊れた場合や、使っていた補聴器など医療器具が故障した場合、新しいものと交換するために壊れた品を宅下げで家族に返却し、外で修理や買い替えをして再度差し入れてもらう、という流れが認められることがあります。
このように、本人の生活や健康維持のために使えなくなった私物を外に出す必要があるときは、宅下げ制度が活用されます。
まとめ
宅下げ制度を使えば、逮捕された家族が持っていた鍵や財布を受け取れる可能性がありますが、携帯電話など捜査に関わる物はすぐには返却されません。大切なのは、焦らず正しい手続きを踏み、必要なときは弁護士に相談することです。
困ったときは、私たち「さしいれや」にもお気軽にご相談ください。経験に基づいたアドバイスとサポートで、少しでも不安を和らげるお手伝いをいたします。